超音波振動加工技術とは
1.超音波振動とは何か
超音波とは周波数が20kHz以上(可聴周波数より高い周波数)の音波のことを指します。
音波は音や振動などとして日常体験するもので、気体、液体、固体を問わず、あらゆる物質中を伝播します。
この超音波振動を上手に制御することにより、工業的に有効に利用することができます。
2.超音波振動加工技術とは
超音波振動加工技術とは、超音波振動を工学分野へ応用した技術のことを言います。切削・研削、金属の変形加工、接合加工、材料加工などへの応用があります。
3.機械的除去加工への応用
機械的除去加工とは、工具によって金属の不要な部分を取り除き、目的のカタチに仕上げる金属加工法の一つです。
産業界が機械加工に要求するものは、加工精度のみならず、各種難削材(耐熱合金、高硬度材、硬脆材など)に対する高能率(単位時間あたりの除去体積が大きいこと)加工、加工コストの低価格、工具摩耗の抑制など多岐に渡っています。
それら要求は工作機械の性能向上をはるかに上回るものであり、このような問題の解決法の一つとして、超音波切削加工が提案されています。
4.切削・切断加工への応用
切削加工においては、工具を超音波振動させることで工具の切れ刃部分と被削材との間に超音波帯域での相対運動が生じます。
カッターやスクレーバなどの非回転工具では、ホーン(超音波振動子と工具の間に組み込まれる部品であり、振動を効率よく伝えたり、振動モードを変換したり、振幅を増幅させたりする)に固定された切れ刃の一部、もしくは全部が超音波帯域で微小振動します。
一方、ドリル、エンミドルなどの回転工具においては、スピンドルタイプの超音波加工機となります。
5.研削加工への応用
研削加工は、様々な砥粒、結合材を選定でき、成型や電着で作られる砥石形状も比較的に任意です。そのため、最終的な仕上げ加工として高い精度や表面粗さを要求されるだけではなく、切削では不可能な高硬度材を高能率に機械的除去加工し、高精度に成形するために不可欠な加工技術ですが、問題点も潜在的に有しています。
- 高硬度材に対応するために超砥粒(ダイヤモンド、CBN)を用いると、砥石が高価になります。その一方で、目詰まり、目つぶれしやすいために頻繁にドレッシングを行うことから、砥石の消耗が著しく激しいです。
- 研削加工で要求されるのは鏡面に近いような表面形状ですが、脱落した砥粒が引き起こす被研削面へのスクラッチは歩留まりを悪化させます。
- 送り速度を遅く、切り込み量を小さくするために、生産性を犠牲にしていますが、これは加工費の高騰に直結します。
- 研削加工に対する一般的な要求に、目詰まりを抑制すること、研削抵抗を下げることや、研削熱の発生を抑えること、および効率的に研削熱を除去することが挙げられます。
超音波研削加工は、砥石を超音波振動させることで、より良好な研削状態を発現させることができます。
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書籍『超音波振動加工技術』