産業ロボットとは

1. はじめに

産業ロボットは、製造業や物流などの現場で作業を自動化するために用いられる機械装置で、主に溶接、組立、搬送、検査といった工程で活躍します。その精密かつ効率的な動作により、生産性を大幅に向上させる役割を果たし、「ファクトリーオートメーション(FA)」の中核として現代の製造業には欠かせない技術です。
その特徴は、複数の関節(軸)やセンサーを備え、三次元空間で自由に動作できる点にあります。プログラムに基づいて動作するため、単純作業から高度な加工まで幅広い用途に対応できる柔軟性も魅力の一つです。

2. 産業ロボットの歴史と発展

産業ロボットの発展は1960年代に遡ります。初期の産業ロボットは、アメリカの企業Unimationが開発した「Unimate」というもので、主に自動車産業で使用されていました。Unimateは、単純な反復作業を自動化することを目的として設計され、これにより自動車部品の溶接や組立作業が大幅に効率化されました。その後、産業ロボットは日本、ヨーロッパなどでも開発が進み、1970年代から1980年代にかけて急速に普及しました。特に日本では、ファナックや安川電機といった企業が産業ロボットの開発で世界的にリードし、1980年代には自動車や電機産業を中心にロボット導入が加速しました。
現在では、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)といった先端技術の進歩により、産業ロボットはさらに高度化し、自動化・柔軟化が進んでいます。

3. 産業ロボットの種類

産業ロボットは、機能や構造によって以下のように分類されます。

3-1. 垂直多関節型ロボット(アーム型ロボット)

人間の腕のように複数の関節を持つロボットです。溶接、組立、塗装など柔軟な動作が求められる作業に適しており、幅広い用途で利用されています。現在、最も一般的なロボットの一つです。

水平多関節型ロボットの例
水平多関節型ロボットの例
直交型ロボットの例
直交型ロボットの例

3-2. 水平多関節型ロボット(SCARAロボット)

水平方向に回転軸を持つロボットで、高速かつ精密な作業が求められる組立工程で使用されます。軽量性とスピードが特徴で、特に電子部品の製造に適しています。

3-3. 直交型ロボット(XYZロボット)

3軸の直線的な動作を得意とし、搬送や部品の配置作業に適しています。そのシンプルな構造により、比較的低コストで導入可能です。

3-4. パラレルリンク型ロボット(デルタロボット)

高速で正確な動作を特徴とし、食品の仕分けや包装など軽作業で活躍します。並列に配置されたアームが柔軟な動きを可能にしています。

3-5. 協働ロボット(コボット)

人間と共に作業できるロボットで、安全技術の向上により柵が不要な環境で使用可能です。中小規模の製造現場において特に需要が高まっています。

4. 産業ロボットの活用分野

産業ロボットは多様な分野で幅広く活用されています。

4-1. 自動車産業

自動車のボディ溶接やエンジン部品の組立、塗装工程などで使用され、生産の自動化と効率化を支えています。

4-2. エレクトロニクス産業

精密な電子部品や基板の組立、検査作業において、ロボットの高精度な動作が不可欠です。

4-3. 食品・飲料産業

食品の包装、仕分け、検査など衛生面に配慮が求められる工程で活躍しています。

4-4. 医療分野

医療機器の製造や手術支援ロボットとして利用されるなど、応用範囲は高度な技術を要する分野にも広がっています。

5. 産業ロボットのメリット

産業ロボットの導入には、以下のようなメリットがあります。

5-1. 生産性向上

一定のスピードと正確性を保つため、安定した品質と効率的な生産が可能です。

5-2. 人手不足の解消

高齢化社会における労働力不足を補い、危険作業の代替手段としても効果的です。

5-3. コスト削減

長時間の稼働が可能で、作業ミスやエラーに伴うコストを大幅に削減します。

5-4. 柔軟な適応性

プログラム変更により多様な作業に対応可能で、少量多品種生産にも適しています。

6. 導入時の課題と解決策

6-1. 初期コスト

高額な導入費用が課題となりますが、長期的には省人化によるコスト削減効果が期待できます。リースや補助金制度の活用も有効な手段です。

6-2. プログラミングの専門知識

ロボットの操作には専門的な知識が必要ですが、教育訓練や外部のサポートサービスを活用することで対応が可能です。

6-3. 柔軟性の限界

従来のロボットは特定の作業に特化していましたが、AIや協働ロボットの活用により対応力が向上しています。

7. 産業ロボットの未来

近年ではAIやIoT技術との連携が進み、産業ロボットはさらに進化を遂げています。例えば、AIを活用することで作業内容を自律的に学習するロボットが登場し、IoTにより工場全体の稼働状況をリアルタイムで監視する仕組みも普及しつつあります。
これにより、工場の効率化だけでなく、生産トラブルの予防や迅速な対応が可能となっています。さらに、省エネルギー型ロボットやリサイクル可能な素材を使用したロボットの開発も進行中で、持続可能性の観点からも注目されています。
産業ロボットは、製造業の効率化のみならず、社会全体の変革をも支える存在として進化を続けるでしょう。

8. まとめ

産業ロボットは、生産性向上や労働力不足の解消に寄与する重要な技術です。導入時にはコストや専門知識といった課題もありますが、技術の進化によりこれらの課題は解決されつつあります。未来の産業ロボットは、さらに知能化し、人間との共存を前提とした形で発展を続けることが期待されています。

PHT株式会社は、半導体関連機器の設計、製造、販売を手掛ける企業です。特にウェーハ搬送ロボットやウェーハ洗浄装置を製作・販売しています。弊社はシリコンウェーハだけでなく、次世代のSiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)などのパワー半導体にも対応する搬送・洗浄ソリューションを展開しています。また、クリーンルーム対応の精密な搬送技術や、自動化されたウェーハ洗浄技術に強みを持ち、半導体製造プロセスを効率化し、技術革新を支えています。

【(著)PHT株式会社 】
EFEM・ソータ(P-EFEM)

EFEM・ソータ
P-EFEM

主に半導体製造工程や精密製造プロセスにおいて、ウェーハやその他の微細加工材料を自動的に搬送、ロード、アンロードするための装置です。高性能ACサーボモータを搭載し、余裕の可搬重量で高速搬送を実現します。ロボット、ロードポート、ハンドのカスタム配置が可能です。