CADとは

ここでは、CAD(キャド)および、CADを応用した技術について、原理、用途、種類、メリットとデメリットなどを説明します。CAD技術は、ロボット・ドローン生産の現場のみならず、現代におけるものづくりには欠かせない存在です。「この業界のことや、この分野の概要を知りたい」という人のために、わかりやすく関連情報をまとめました。ぜひご活用ください。

1.CAD技術の概要

CADとはComputer Aided Design(コンピュータ支援設計)の頭文字から取った略語で、コンピュータを用いて設計図面を作る際に使うソフトやシステムの総称として使用されています。CADやその周辺技術を扱える技術者のことを、CADオペレーターと呼ぶのが一般的です。

2. CADの歴史

「コンピュータを活用して、設計図面作りの効率化をする」という概念は早くからあり、少なくとも1970年代には現在のCADの原形となるシステムが開発されていました。その後、各社で開発競争が進み、関連技術とともにCADシステムが次々と実用化されました。
大手企業を中心に、建築・自動車・航空機・機械・土木など、それぞれの分野で専用CADが開発されたほか、2000年代以降は中小企業や個人でも使える汎用ソフトが販売され、それまで主流であった手描きによる設計技術に置き換えられるようになりました。
コンピュータ技術の発展に合わせて基本機能および付随機能は高度化し、現在では、CADとその関連技術が、多くのものづくりの現場の中核を担っています。
CADをベースとして、CAM(キャム)やCAE(シーエーイー)といった技術が存在し、以下の技術は、CADがなければ成立しない技術です。

2-1.【CAM】

Computer Aided Manufacturing(コンピュータ支援製造)の略語で、「CADデータから、工作機械類を制御するプログラムを生成するシステム」を指します。
CADで作られた精細な設計データは、CAMを介してマシニングセンタ、NC旋盤、3Dプリンタなどに送られ、より精密な部品や金型などの製造加工を実現します。
今日の機械製造の現場において、CADを単独の設計技術として使うことはむしろまれであり、CADで完成されたデータは、大半の場合、CAMで使用されることを前提としています。特定の、あるいは複数の工作機械と互換性を持ち、CADとCAMの工程をまとめたツールやソフトは、CADCAM(キャドキャム)と呼ばれることもあります。

2-2.【CAE】

Computer Aided Engineering(コンピュータ支援エンジニアリング)の略語で、「CADデータとコンピュータの物理演算機能を活用してシミュレーションや解析を行うシステム」を指します。
CAEでは、CADで設計・モデリングされた物体のデータを用い、仮想空間内で動作・組み立て・強度などを確認できます。また、応力や磁場などまで可視化して、さまざまな解析をおこなうこともできます。
現在も、CAEの精度や機能は向上し続けており、たとえば金型内の融解樹脂の挙動をシミュレートする「流体解析」なども高精度で実現されています。CAEは製品の開発コストの圧縮、試作を含めた開発時間の短縮、生産効率の向上、歩留まりの改善など、特に機械工学分野では欠かせない技術となっています。

3. CAD技術の動作原理

CADソフトの基本機能であるアプリケーション・ロジック、すなわち、データベース・演算・モデリングなどの機能は、使用するPC(コンピュータ)のスペックに依存します。
平面の二次元データのみを扱う2DCADであれば、それほど高いスペックは要求されません。しかし、現在の主流である、立体の三次元データを扱う3DCADソフトを使う場合は、じゅうぶんな処理速度を得るためのCPUや、大容量のメモリが必要となるでしょう。CADソフトを扱うための専用PCを用意して操作するのが理想です。
3DCADやCAEを動作させる際に、特に気をつけたい項目は、GPU(グラフィックボード)の能力です。特に、最新のCADソフトでは3Dデータは高画質化、精細化が進んでおり、GPU環境を整えておかないとディスプレイ面で問題が生じます。また、技術的な問題から、CADソフトとGPUには相性のようなものも存在します。
通信速度の向上によりクラウドに対応したCADソフトも増えるとともに、UI(ユーザーインターフェース)が工夫され、用途や現場環境に合わせた運用がしやすくなるなど、基本機能以外の充実もはかられています。

4. CAD技術の用途

CAD技術には、さまざまな用途があり、それぞれの分野で専用CADが開発されています。
航空機や自動車をはじめとする機械産業では機械用CADが、建築や土木では建築CAD、土木用CADがあるほか、アパレル・宝飾関連・インテリアなどで活躍する専用CADもそれぞれあります。ほかに電子回路の設計に特化した回路設計用CADなどもあります。設定を変えることで、さまざまな用途に使える汎用CADもしばしば使われます。
ロボット・ドローン生産において、主に需要があるのは機械用CADです。同時に、汎用CADや回路設計用CADも活用されています。

5. CADソフトの種類

CADソフトの選択では、最終製品の実現に必要となる、複数の機能が備わっていることが重視されます。そのほか、他のソフトウエアとの連携機能や拡張性などさまざまな要件が、ライセンス料に照らし合わせて検討材料となるでしょう。以下に、国内外で評価の高い、代表的な設計ツール・CADソフトを簡単に紹介します。

名称 提供会社(※) 用途・特徴
AutoCAD 米Autodesk社 汎用CADの代表格。データフォーマットなどを公開することで互換性を高め、世界的に高いシェアを獲得した。
Autodesk Inventor 米Autodesk社 AutoCADをベースにしたCADシステムで、機械系の製造業に特化している。
IJCAD インテリジャパン社 純国産汎用CADの1つ。AutoCADをはじめとした他のソフトと互換性がある。
CATIA 仏ダッソー・システムズ社 航空機・自動車・重工業など、業界大手各社でも採用の多い、ハイエンドユーザー向けソフト。
SOLIDWORKS 仏ダッソー・システムズ社 機能性に定評のある機械用CAD。ハイエンドCADと普及版汎用CADの中間程度の機能を備え、ミドルレンジCADと認識されている。
Autodesk Fusion
(旧 Fusion360)
米Autodesk社 CAD/CAM/CAEを備えた多機能かつクラウドベースのCADソフト。個人レベルでも使える手軽さと、有償だが高い拡張性も併せ持つ。
Top Solid 仏TOPSOLID SAS社 フランス国内でのシェアが高いCADソフト。高機能で汎用性が高く、挙動の軽さに定評がある。
iCAD SX 富士通株式会社 富士通が自主開発した国産CAD。部品点数が多い設計に強く、高速処理が可能。
PTC Creo 米PTC社 モデリング機能が充実している。また、シングルデータベースで設計変更に強い。
Siemens NX 独Siemens社 CATIAなどとも肩を並べる、世界的シェアを持つハイエンドユーザー向けCADの1つ。
Solid Edge 独Siemens社 ミドルレンジCADソフト。直感的でスピーディーな操作ができることに定評がある。

※CAD業界は開発元の買収や子会社化も比較的頻繁におこなわれ、販売会社が変更になる場合もあります。ここでは、参考となる親会社(2024年現在)を表記しています。

6. CAD技術のメリット・デメリット

最後に、CAD技術のメリットやデメリットについて、まとめます。

6-1. CAD技術のメリット

CADおよびCAD関連技術には紹介しきれないほどたくさんのメリットがあります。メリットについてまとめるならば、従来の手描きによる設計などに比べて、圧倒的に効率的な運用が可能なこと、その結果、コスト削減や作業時間短縮に大きく寄与していること、です。

6-2. CAD技術のデメリット

CADには明確なデメリットは存在しません。かつてはコンピュータの性能による制限を受けることもありましたが、コンピュータの小型化、高性能化の発展が著しい今日では、デメリットとして意識されることはめったにないでしょう。
あえて欠点をあげるなら、CADソフトのライセンスフィー(使用料)の問題です。
現在のCADソフトには無料で使えるものもありますが、商用レベルで使用する場合は、かなり高額のライセンスフィーがかかるのが一般的です。やみくもに多機能を追求して使用料の高いソフトを導入しても、それらの機能を使わない、あるいは使いこなせないなら無駄になります。

さらに、会社組織でCADを導入する場合は、CAD技術に精通した人材、すなわち優秀なCADオペレータの育成や確保にも、かなりのコストと時間がかかることは認識されるべき事実です。
そうした事情もあって、開発や生産に絡むさまざまなCADオペレーションを「外注」する企業が増え、それらを請け負うCAD関連技術専門の製作所などにも需要が生じています。

CAD関連技術のご相談なら、シンクリP・Aへ

株式会社シンクリP・A(https://www.shincri-pa.com/)は、設計開発の支援から試作品制作まで、クライアント企業をCAD技術でバックアップするソリューションカンパニーです。シンクリP・Aは、世界的な最上位プラットフォームの1つである「CATIA V5」を採用し、確かな技術と豊富な実績で多くの企業の生産・開発プロジェクトを支えています。

【実績例】

  • 企画図案(例えば画像・イラスト)から、精密な3D-CADデータの作成
     製作事例:建築物縮小モデル、ロボットフィギュアモデル(等身大)
    消しゴムサイズ自動車モデル、観光用土産(ご当地キャラの置物)、生活用品(ボディケアボトル、水筒など)
  • 高精度、高品質、コストパフォーマンスに優れた試作品の製作
  • 3Dスキャン,測定からのリバースエンジニアリング
  • 技術社員の3D CAD・CAE、3Dプリンターによるコンサルティングなど

企画図/イラスト->CADで、造形モデルを作成 (機械部品だけでなく0->1の製品化も可能です)

(左)企画・構想(右)3D CADで形状検討
最後まで使えるボトル(製作は、3Dプリンターで造形)
最後まで使えるボトル(製作は、3Dプリンターで造形)
(ボトルフックと組み合わせし、中も見える)

また、上記製品から、新たに派生し製作した事例もございます。

壁付け最後まで使えるディスペンサー(中も見える)
壁付け最後まで使えるディスペンサー(中も見える)
(ノズル部は既成の部品、それ以外は3Dプリンター作 )
【(著)株式会社シンクリP・A 】