ロボットにおける 設計ツール・設計技術とは

ここでは、ロボット・ドローン生産の現場において使われている「設計ツールや設計技術」について、その概要や発展の歴史、メリットやデメリットなどについて情報をまとめました。「この業界や分野の全体像を知りたい」という人のためにわかりやすく書いています。ぜひご活用ください。

1. 設計ツール・設計技術の概要と用途

1—1. 設計ツール・設計技術の概要

建築物、そして工業製品の大半には「設計図」が存在し、その設計図をもとに生産工程が決められます。設計図は製品や建築の企画・試作段階から用意され、途中で改良などを経ることもありますが、生産の最終段階までの、あらゆる場面で使用されます。この生産物の命ともいえる設計図を、「正確かつ効率よく準備する」のが設計ツール・設計技術に課せられた使命であり、その手法も近代的工業とともに発展してきました。まずはその歴史と概要について簡単にご紹介します。

設計図の作成は、長らく製図技術を専門に学んだ技術者による手作業でした。状況が急激に変化したのは1980~90年代です。コンピュータ技術の介入によるCADの登場が、その景色を一変させました。
CADの登場により、作業効率や生産性が向上しましたが、さらにコンピュータ技術の発展に合わせてCADの持つ機能も加速的に発展を遂げます。
現在では、単に効率のよい「設計図作り」としての働きを超え、試作を補助するシミュレーションやリバースエンジニアリング技術など、さまざまな機能が利用されるのは当然のこととなっています。CADを軸とした設計ツール・設計技術が、生産現場には欠かせない技術であるといっても、異論は出ないことでしょう。
すなわち、もともとは設計図のための技術であったものが、現在では生産の中核技術と認識されるようになりました。

1—2. 設計ツール・設計技術の用途と分類

設計ツール・設計技術は、その手法や用途に合わせて分類され、さまざまな呼ばれ方をします。ここでは、代表的なものを紹介します。

【手描き製図】
CADの登場前は、主流であった設計技術です。手描き製図では、「ドラフター」などとして知られる、専用の製図台を使用するのが一般的です。製図台は、大きな板状の台に各種の定規や製図道具をつけるアームが取り付けられており、設計図を効率よく描けるような工夫が凝らされています。手描き製図は現在も使われてはいますが、製図の基本を学ぶための教育用など、その用途は限られています。
【CAD】
CAD(キャド)とはComputer Aided Design(コンピュータ支援設計)の頭文字から取った略語で、コンピュータを用いて設計図面を作る際に使う、ソフトやシステムの総称として使用されています。CADを使って設計に携わる技術者は、CADオペレーターと呼ばれます。
CAD技術の登場により、あらゆる設計図面がデジタルデータとして保存・複製・印刷できるようになり、利便性が向上しました。また、コンピュータの高性能化につれて、物理演算を用いた三次元(3D)での設計も可能になり、さまざまな追加機能も搭載されるようになりました。
CAD技術は、後述するCAM・CAE技術などと共に発展し、建築・電子回路等の各専門分野ごとに特化した専用CADや、どの業界でも活用できるような汎用CADなど、多種多様なCADが開発され、先述の通り、現在使われている設計ツール・設計技術の中心となっています。
【CAM】
CAM(キャム)とはComputer Aided Manufacturing(コンピュータ支援製造)の略語で、CADで作成した図面をもとに、工作機械を制御するプログラムを生成するシステムを指します。その名の通り、CAMそのものは厳密には設計技術というよりも製造技術に属しますが、CADを前提として用意された機能であるがゆえ、CADとCAMの工程が連動しているツールが多く存在します。それらはCADCAM(キャドキャム)と呼ばれることもあります。CAMの性能は、制御対象の工作機械の性能・精度に依存するほか、CAM自体の互換性なども重視されます。
【CAE】
CAE(シーエーイー)とは、Computer Aided Engineering(コンピュータ支援エンジニアリング)の略語で、コンピュータの物理演算機能を活用してシミュレーションや解析を行うシステムを指します。
CAEでは、CADで設計・モデリングされた物体のデータを用い、仮想空間内で動作・組み立て・強度などを確認できます。また、応力や磁場などまで可視化して、さまざまな解析をおこなうこともできます。コンピュータの性能向上に合わせ、CAEの精度や機能は向上し続けており、現在ではたとえば金型内の融解樹脂の挙動をシミュレートする「流体解析」なども高精度で実現されており、製品の開発コストの圧縮、試作を含めた開発時間の短縮、生産効率の向上、歩留まりの改善など、特に機械工学分野では欠かせない技術となっています。

2. 設計ツール・設計技術の発展とその動作原理

設計ツール・設計技術としてのCADの発展をまとめて理解してみましょう。CADの動作原理は、コンピュータの演算処理能力やプログラミング技術です。したがって、CADの発展の歴史はコンピュータ技術の発達や普及とほぼ連動していることがわかります。

【CAD黎明期(1960~70年代)】
コンピュータの基盤が真空管からトランジスタに置き換わり、処理能力が上がったことでCADの原型が生まれました。これより少し前から研究があったとされていますが、CADという概念が世に出たのはこの頃で、現在の主要ソフトの源流となる製品が開発・発表されていきました。
【CAD発展期(1980~90年代)】
コンピュータ技術の進歩に合わせ、実用ベースでのCADの優位性が確立されました。ただ、当時はCADを動作させる大型コンピュータ導入には大きなコストがかかったため、80年代では大手企業が独自に導入するインハウスCADが主役でした。その後、コンピュータの小型化・低価格化に合わせて、中小の企業でも導入が進み、さまざまなCADソフトが開発される発展期を迎えます。
【CAD普及期(2000~2010年代)】
2000年代に入ると、飛躍的に高性能化したコンピュータに後押しされ、個人レベルでのCAD導入さえ可能となりました。特定の分野に特化したCAD、また逆に互換性の高い汎用CADなど、CAD技術は多種多様な業界で主流の設計ツール・設計技術となって、その立場を確立していきます。
【CAD成熟期/第二次発展期(2010年代~現在)】
現在では、ものづくりと言えばCAD技術から始まると言っても過言ではないくらいに、CAD/CAM/CAE技術を土台とする生産がおこなわれています。またCADソフト自体も、クラウドネットワークの活用、AI機能の搭載など、新世代を見据えたサービスが追加されており、さらなる発展期を迎えているとも言えるでしょう。

3. 主な設計ツール(CADソフト)の種類・用途・特徴

CADソフトには、分野ごとにさまざまな種類がありますが、ロボット・ドローン生産において需要があるのは主に機械用CADです。ほかに、汎用CADや回路設計用CADも活用されます。
設計ツール(CADソフト)の選択では、最終製品の実現に必要となる、複数の機能が備わっていることがまず重視されます。これらのツールの基本機能であるアプリケーション・ロジック、すなわちデータベース、演算、モデリングなどの機能に加え、UI(ユーザーインターフェース)の充実などが、ライセンス料に照らし合わせて検討材料となるでしょう。さらには他のソフトウエアとの連携機能や拡張性などさまざまな要件も存在します。
以下に、国内外で評価の高い、代表的な設計ツール・CADソフトを簡単に紹介します。

名称 提供会社(※) 用途・特徴
AutoCAD 米Autodesk社 汎用CADの代表格。データフォーマットなどを公開することで互換性を高め、世界的に高いシェアを獲得した。
Autodesk Inventor 米Autodesk社 AutoCADをベースにしたCADシステムで、機械系の製造業に特化している。
IJCAD インテリジャパン社 純国産汎用CADの1つ。AutoCADをはじめとした他のソフトと互換性がある。
CATIA 仏ダッソー・システムズ社 航空機・自動車・重工業など、業界大手各社でも採用の多い、ハイエンドユーザー向けソフト。
SOLIDWORKS 仏ダッソー・システムズ社 機能性に定評のある機械用CAD。ハイエンドCADと普及版汎用CADの中間程度の機能を備え、ミドルレンジCADと認識されている。
Autodesk Fusion
(旧 Fusion360)
米Autodesk社 CAD/CAM/CAEを備えた多機能かつクラウドベースのCADソフト。個人レベルでも使える手軽さと、有償だが高い拡張性も併せ持つ。
Top Solid 仏TOPSOLID SAS社 フランス国内でのシェアが高いCADソフト。高機能で汎用性が高く、挙動の軽さに定評がある。
iCAD SX 富士通株式会社 富士通が自主開発した国産CAD。部品点数が多い設計に強く、高速処理が可能。
PTC Creo 米PTC社 モデリング機能が充実している。また、シングルデータベースで設計変更に強い。
Siemens NX 独Siemens社 CATIAなどとも肩を並べる、世界的シェアを持つハイエンドユーザー向けCADの1つ。
Solid Edge 独Siemens社 ミドルレンジCADソフト。直感的でスピーディーな操作ができることに定評がある。

※CAD業界は開発元の買収や子会社化も比較的頻繁におこなわれ、販売会社が変更になる場合もあります。ここでは、参考となる親会社(2024現在)を表記しています。

4. 設計ツール・設計技術のメリットとデメリット

4—1. 設計ツール・設計技術のメリット

これまでも見てきた通り、現代工学、特にロボット・ドローン生産においては、設計ツールや設計技術といえばほぼ、「CADを軸とした技術」のことを指しています。
そして、CADが持つメリットは無数にあるため、ここで具体的には紹介しきれません。
しかし、ロボット・ドローン生産においては「CADの性能が開発力を左右する」と言っても過言ではないくらいに、開発時間やコストに影響を与えているのは事実です。「CADの恩恵は計り知れないものである」さらに言い換えるなら「CAD技術なしでのロボット・ドローン生産は成り立たない」というのが本当のところでしょう。

4—2. 設計ツール・設計技術のデメリット

CAD技術を使用する際のデメリットを少ないが、強いて欠点をあげるなら、
その使用コストの問題です。
現在のCADソフトには無料で使えるものもありますが、商用レベルで使用する場合は、かなり高額のライセンスフィー(使用料)がかかるのが一般的です。また、やみくもに多機能を追求して使用料の高いソフトを導入しても、使わない機能があれば投入したコストの無駄になります。
さらに、CADソフトをじゅうぶんに使いこなせる人材、すなわち優秀なCADオペレータの育成や確保にも、かなりのコストと時間がかかることを意識するべきでしょう。
そうした事情もあって、開発や生産に絡むさまざまなCADオペレーションを「外注」する企業が増え、それらを請け負うCAD関連技術専門の製作所などにも需要が生じています。

5. 設計ツール・設計技術のご相談は、CAD技術のシンクリP・Aへ

株式会社シンクリP・A(https://www.shincri-pa.com/)は、設計開発の支援から試作品制作まで、クライアント企業をCAD技術でバックアップするソリューションカンパニーです。シンクリでは、世界的な最上位プラットフォームの1つである「CATIA V5」を採用し、確かな技術と豊富な実績で多くの企業の生産・開発プロジェクトを支えています。

【実績例】

  • 企画図案(例えば画像・イラスト)から、精密な3D-CADデータの作成
    例:建築物縮小モデル、ロボットフィギュアモデル(等身大)
      消しゴムサイズ自動車モデル、観光用土産(ご当地キャラの置物)など
  • 高精度、高品質、コストパフォーマンスに優れた試作品の製作
  • 技術社員の3D CAD・CAE、3Dプリンターによるコンサルティングなど
企画図->CADで、造形モデルを作成(機械部品だけでなく建築物も製作可能)
企画図->CADで、造形モデルを作成(機械部品だけでなく建築物も製作可能)
弊社スタッフが、顧客先に出向、3Dプリントオペレーション指導を行います。
弊社スタッフが、顧客先に出向、3Dプリントオペレーション指導を行います。
【(著)株式会社 シンクリ P・A】