清掃ロボットとは

1. 清掃ロボットとは

1-1. 清掃ロボットとは

清掃ロボットとは、自動で走り、掃除を行う機械のことを指します。一般に床を掃除するロボットが広く知られている一方で、近年はその用途が拡大してきており、窓や水面・水中などを掃除するロボットも開発されてきています。

1-2. 清掃ロボットの開発

清掃ロボットは、省力化のために開発されました。掃除を楽にしたいという思いや、共働き増加などにより掃除に十分な時間を割けない状況の発生といった社会の変化に対応して開発された製品です。スタートボタンを押す、またはタイマーにセットした時間がくると自動で走りだし、掃除してくれます。

人がしてきた掃除を自動でできないか、という考えが開発背景にあります。そのため、清掃ロボットには、人の手間をかけず、きれいに掃除することが求められます。これを実現するため、清掃ロボットは進化を続けています。

2. 清掃ロボットの原理と進化

家庭用床掃除ロボットを例としてその原理や進化について紹介した後、床以外で活躍している清掃ロボットについて紹介します。

2-1. 床清掃ロボットの原理

床清掃ロボットは、床面をくまなく移動して、ゴミを回収することを目的に開発されています。それを実現するため、機体と走行動作のそれぞれに工夫がなされています。

床清掃ロボットの機体は、家具などを傷つけないように丸型、または丸みを帯びた三角形の形状が多く、台の下にも入れるよう全高が低くなるように構成されています。また、走行するためにいくつかの車輪が取り付けられ、前後進や回転ができます。さらに、床清掃ロボットの下面には、床に落ちているごみを集めるため、回転するブラシが取り付けられています。人が使う掃除機と同様に、空気と一緒に吸引することでごみを回収しています。

床清掃ロボットは、自動清掃や自律移動を行うために、様々なセンサが搭載されています。自動清掃では、ごみの吸引時の負荷変動やほこりセンサを使用することで、現在の汚れ具合を調べながら(記録しながら)掃除を行っています。また、ごみの回収タンクの空き容量を推定する機能もあります。

自律移動では、床清掃ロボット自身の移動や回転(オドメトリ)を知るために、車輪には回転角センサが取り付けられています。また、床清掃ロボット自身が空間のどの場所にいるか、またその向きはどうなっているか、走行可能かなどを知るため、障害物や壁・床を検出する赤外線や超音波センサが取り付けられています。

床面をくまなく移動するための走行動作は、家庭用と業務用で大きく異なります。

家庭用床清掃ロボットは、低コストに実現する方法として、ランダムウォークを中心としたいくつかのアルゴリズムを採用して、床面をくまなく移動するようにしました。例えば、掃除を始めるとまずは直線的に走りだし、前方に障害物や壁を検出した場合に、アルゴリズムに従ってロボットの向きを変えて、また掃除を始めます。この単純な動作を繰り返すことによって、いずれ掃除すべき場所すべてを掃除できるというのがこの動作の基本となっています。非効率で時間は掛かりますが、概ね全領域を移動できるようにアルゴリズムが構成されているため、床清掃の目的を達成することができています。

一方で業務用床清掃ロボットでは、製品の低コスト化よりも業務での清掃効率が優先されるため、マッピング機能によって床面をくまなく移動するようになっています。あらかじめ、清掃する場所の環境地図を持っておき、ユーザーの指定したエリアを効率よく清掃するように移動していきます。業務用では、店舗やオフィスで使用されることが想定されるため、壁や商品に衝突しないように設計されています。さらに、ガラス壁や鏡の壁、カーテン、瓶など倒れやすい商品のある棚、柔らかいぬいぐるみ、ブライダルドレスなど、家庭環境よりも複雑で多様な使用環境にも耐えられるよう、様々なセンサが複合的に用いられています。

2-2.床清掃ロボットの進化

床清掃ロボットが自動で掃除をしてくれるため、掃除が楽になるというメリットがありますが、同時にいくつかのデメリットも生じてしまいます。デメリットとして、掃除に時間がかかる、床清掃ロボットの導入でゴミ捨てや走行経路の安全確保などが必要になる、動作音が大きいなどがあげられます。こうしたデメリットをなくすためにも、様々な進化を遂げています。

マッピング機能は開発されてから進化し続けています。高性能なロボットは、カメラやレーザー光を応用したLiDARを用いて、床清掃ロボットの周辺環境の地図生成と位置推定(SLAM)を行っています。離れたものや壁を認識し、部屋の大きさやものの配置などをあらかじめ把握することで、掃除をし残す場所の発生を減らしつつ、掃除にかかる時間を短縮できます。また、スキャンした結果を記録していくことにより、ユーザーがロボットを移動させてもロボットがいる場所を自分で認識できます。さらに、違う部屋を掃除させようとしたときにも、スキャンした記録があれば、どの部屋かも認識することができ、掃除の効率が非常に高まります。

以前は、清掃ロボット内のごみがいっぱいになると、ユーザーがゴミを捨てなければなりませんでした。近年、充電器にゴミをためる機構が一体となったものも増えています。これにより、ロボットが充電するときに、ロボット本体から、充電器へゴミを移し替えます。この機能により、ユーザーがゴミを捨てる回数が大幅に減りました。

走っている床の種類を見分ける技術も進化しています。清掃ロボットは、底面に設置される短い距離も高精度に測定できる距離センサや、カメラを用いて、床の起伏や質感を識別することができます。そのため、フローリングやじゅうたん、畳などその床の性質に合わせて、吸引力やブラシの回転数を自動で変更します。これにより、よりきれいに掃除を行えるようになるほか、必要以上に電池を使用しないため、連続動作可能時間を延ばすことにも貢献しています。

スマートフォンと連携する清掃ロボットも登場しています。これまでは、スタートスイッチを押すことで開始していました。スマートフォンと連携することで、外出先でも掃除が開始できます。また、掃除する部屋や吸引力の設定など様々な機能を調整することができます。吸引力を調整することで掃除の際に発生する音を抑えた、静音モードを備えたものもあります。さらに、音声認識AIを搭載するものも登場しており、声で指示を出すだけで、清掃ロボットが簡単にコントロールできます。

3. 清掃ロボットの種類と用途

 

3-1.家庭用床清掃ロボット

清掃ロボットとして最も身近なものが家庭用床清掃ロボットです。ルンバ(iRobot社)が有名ですが、ほかにも、Panasonic社、ECOVACS社の製品などがあります。これらの会社の製品には、掃き掃除をするロボットだけではなく、床の拭き掃除をするロボットも販売されています。清掃ロボット底面にモップや拭き掃除用の布を備えており、水拭き、から拭きに対応しています。中には、ロボットから水を噴射し、汚れを浮かせてふき取るという仕組みを備えたものもあります。

3-2.業務用床清掃ロボット

業務用床清掃ロボットも駅や商業施設、オフィスなど様々なところで導入が進んでいます。家庭用清掃ロボットよりも一度に掃除できる面積が広いため、その分機体も大きいものが多くなっています。家庭用同様に掃き掃除用、拭き掃除用に分かれています。掃き掃除用は、ゴミを集めるタンクの容量が大きく、吸引力が強くなっており、拭き掃除用も水のタンクの容量が大きくなるなど、掃除能力が高く、継続して運用できる時間も長くなっていることが特徴です。

3-3.窓清掃ロボット

窓清掃ロボットは、窓に張り付いて移動しながら、窓の拭き掃除をします。窓清掃ロボットは、窓を挟むように両側に機体を設置し、磁力を用いて窓に張り付く、または窓と機体の間に真空状態を作り出して張り付くものもあります。窓を掃除していると落下する危険もあるため、落下しないように段差を検知するセンサを備える、電源が寸断しても即座に落ちないように予備電源を備えるなど工夫が施されています。また、床や壁鏡なども一台で掃除できる製品もあり、小型の拭き掃除ロボットとして活躍しています。

3-4.水上ゴミ清掃ロボット

湖や川、水路といった水域が身の周りにたくさんあります。このような水域において、ゴミの投棄やあおこの発生などが社会問題として取り上げられることが増えつつあります。この問題を解決すべく開発が進められているのが、水面を掃除するロボットです。船のように浮かんでゴミを集めるものや、機体を半分沈めて機体内にゴミを取り込むなど形状は様々あります。

清掃ロボットは、開発されてから様々な進化を遂げており、ロボットが人の代わりに掃除をするという目的が達成されつつあります。また、掃除をする以外にも防犯や見守りなどに活用されるなど、移動できるというメリットを生かした活用方法の検討も進んでいます。さらに、活躍するフィールドも床だけではなく、窓や水面などへと広がっています。清掃ロボットは、気づかないうちに私たちの生活に欠かせないものになっていくのかもしれません。

水上のゴミをスイスイ集めるジンベエザメ型水上ドローン「ジンベエ」(炎重工株式会社)

炎重工株式会社

炎重工株式会社では、2つのフロートで機体を支える双胴船を利用した水面を掃除する水上ドローンを開発しています。フロートの間にゴミ回収用のネットを取り付け、ゴミをまたぐように水面を移動することでゴミを回収します。さらに油分除去シートを備え、水面に浮かぶ油も掃除することが可能です。遠隔操作だけでなく、GPSによる自動走行も可能です。

【(著)炎重工株式会社】