協働ロボットとは
1. ロボットについて
ロボットといえば何を思い浮かべますか?最近身近にいるロボットですと、ファミレスにいるネコ型運搬ロボットや、おしゃべりをして案内などをしてくれる人型ロボットなどが有名ですね。ロボットが身近になっている昨今ですが、みなさんは食品工場で食品をピッキングするロボットアームや、自動車工場で車の組立などをしているロボットなどをみたことがありますか?
今回は、表舞台にはでないけれど今後の製造業を支える「協働ロボット」についてすこし知っていただければと思います。
1-1. 協働ロボットとは?
協働ロボットは、そのまま人と協力して働けるロボットのことです。ほとんどが6軸関節のロボットアームとなっており、従来の産業用ロボットのような、大きくて重機のようなイメージとは異なり小型でスマートです。従来の産業用ロボットは速くてパワーがある反面、大型で重量があるため、産業用のロボットアームが人に当たれば大けがをする恐れがありました。そのため安全対策として人と隔離する必要があり、安全柵を設置する規定がありました。
協働ロボットであれば、従来の産業用ロボットよりも小型で軽量、人と作業をする前提のロボットのため安全を考慮した設計・規格があります(ISO10218-1などの国際規格)。協働ロボットは従来の産業用ロボットとちがい安全柵が不要なため、今まで設置が難しかった狭い現場や作業場所のレイアウトが変更できない現場でも運用できます。また、協働ロボットと従来の産業用ロボットが異なる点は、協働ロボットは単純作業だけでなく細かな作業や多種多様な作業が可能となりました。多種多様な作業とはなにか、以下より記述したいと思います。
1-2. 協働ロボット使用事例
製造業
- パッキング作業
ピック&プレイス、バラ積みピッキングなど、生産ラインの最終工程の箱詰めや食品をパッケージに配膳など今まで人の手で作業していた繊細な工程が代替できます。箱詰めや配膳などの作業をロボットに代替させるのは一見簡単なようですが、箱詰めの際製品の向きをそろえることや、毎回形の違うものを扱うのはたいへん難しい作業でした。協働ロボットとカメラなどを組み合わせることにより、そういった複雑な工程を実現することが可能となりました。 - パレタイジング(積み上げ作業)
物流業界や倉庫などで、段ボールに入った製品や物品の積み上げ作業で協働ロボットは活躍しています。重い荷物を人よりも早く、正確に積み上げてくれるため、人による荷運びの負担(けがや病気のリスク)を減らすことができます。 - 組み立て、ねじ締め、塗布
協働ロボットは人の半分の大きさのものから卓上に乗るようなものまでさまざまなサイズのロボットがあるため、車のような大きなものから卓上の小さなものまで組み立てや接着材の塗布、ねじ締めなどができます。 - 研磨、加工、溶接
協働ロボットのアームの先端を付け替えることにより、加工部品の表面研磨やバリ取り、磨き上げ、溶接作業までこなすことができます。協働ロボットはダイレクトティーチング(ロボットを直接動かして動きを覚えさせる)もできるため、プログラムをしなくても熟練者の動きを再現すること可能です。
教育機関
工業大学などでは、プログラムや実習での学習に、設置しやすく安全で安価な協働ロボットの導入がすすんでいます。また、研究機関などでも薬品の攪拌やピペットの扱い、機具の洗浄などの用途で使用されています。
医療・介護
医療業界では、手術支援や調剤支援などで協働ロボットが活躍しています。ロボットによる手術は出血量を抑えられ、傷口が小さいため痛みの軽減にもなります。
介護業界では、起立補助や歩行補助、入浴支援など自立動作に関する導入をすすめていこうとしています。AIとの組み合わせでバイタルなどをモニタリングしつつ補助ができるため安全性も確保されるでしょう。
以上が協働ロボットの導入事例でした。
上記でもあるように、協働ロボットは今まで人が行っていた作業や体に負担がかかる作業を代替できるため、これからの人口減少に伴う人手不足に大いに役立ちます。また、協働ロボットは省スペースで設置ができるため生産性の向上、人との作業が可能なため作業の効率化、省人化にもつながります。
1-3. 協働ロボットのメリット・デメリット
メリット
- 労働力不足の解消
現在日本の人口は12年連続で減少し続けています。少子高齢化だというのはさんざん騒がれていますが、労働力不足もかなり深刻です。製造業も例外ではなく、年々人手不足による生産力・品質の低下や事業の縮小など多くの問題を抱えています。そのため、単純作業や体に負担のかかる作業、危険な作業などを協働ロボットが代替することにより、労働の質の向上や、生産力の向上、品質の安定化、安全性の確保をすることが可能となります。 - コスト削減と省人化の実現
協働ロボットは導入する際の初期費用がかかりますが、長期的にみればコスト削減となります。たとえば物量を多くこなさなければならない作業であっても、協働ロボットであれば24時間稼働させることができるため生産力の大幅アップ・残業代の削減になります。品質も一定のクオリティが保たれるため、欠陥品やミスが減り生産コストの削減になります。
また、作業員の負担が軽減されると今まで作業に従事していた人員を技術的・クリエイティブな作業へと導入できるようになり、少ない人員でも生産ラインを維持することが可能となります。また、負担が軽減されると作業員の労働の質が向上ひいては離職率の抑制にもつながります。 - スペースの有効活用による生産効率の向上
従来の産業用ロボットと協働ロボットの生産効率のちがいとして、協働ロボットは安全柵が不要で、柵が設置できず今までロボットをおけなかった場所で稼働できる点です。また、大量生産もできるので省スペースでより多くのロボットを配置することができます。 - プログラミングができなくても工程の指示が可能
協働ロボットは不定期に生産する、あるいは特定の人しか生産できないなど属人化しやすくマニュアル化しづらい多品種少量生産にも活躍します。それは協働ロボットが複雑な動きを再現できるというのも要因ですが、作業を覚えさせるために難しいプログラムが不要なため実現の難易度が下がり、複数の工程を協働ロボットに任せることができるためです。
ほとんどの協働ロボットにはダイレクトティーチング(ロボットを直接動かすことで動作を覚えさせる)やブロックプログラミング(視覚的にプログラミングを組める)が搭載させているため、プログラムが出来なくても多様な工程を実行させることができます。そのため多品種少量生産をしていた作業者が急病や定年などで突然辞めることになったとしても、協働ロボットに覚えさせれば技術の継承や教育にかかるコストを抑えながら同じクオリティを永続的に再現します。 - 安全性の向上
協働ロボットは人と同じ環境で作業するために、リスクアセスメント(作業における危険性、有害性の調査)に基づいて設計・製造されたロボットです。挟み込みや巻き込みが起きにくく、接触した際の衝撃を和らげる丸みを帯びた形状などが多く採用されています。また、制限速度や荷重の閾値を超えた場合、ロボットが停止する機能があります。
デメリット
- 初期費用が高い
協働ロボットの導入には、ロボット本体だけでなくハンドや吸着(エンドエフェクタ)・架台などの周辺機器も必要となり、複雑な設定の場合はシステムインテグレータ(Sier:システム開発を請け負う)と協力するため、おのずと初期費用は高額となります。しかし、費用対効果を試算し投資額に対し利益を回収できる期間の見通しが計上できれば、長期的にみても人手不足解消や生産力の向上・品質の安定化を図ることができるため利益へとつながります。
協働ロボットは世界的にも需要が増えているため、世界のロボット市場で多くの協働ロボットが生産・出荷されるでしょう。協働ロボットが大量生産されるようになれば1台当たりの生産コストが下がり、今より協働ロボットは比較的安価になると予想します。協働ロボットを安く仕入れることができれば、初期費用の回収、ひいては利益化を早めることができます。また、ロボット導入に関する補助金についても調べて頂くことをお勧めいたします。 - 速度が産業用よりも遅い
協働ロボットは人と作業する前提のためスピードやパワーよりも安全性が重視されています。そのため産業用ロボットに比べスピードが遅いです。
しかし協働モード(作業スピードの閾値を超えた場合自動停止)と産業用モード(産業用ロボットと同程度のスピードで作業する。安全面は考慮されない。)を切り替えられる製品もあるので、人がいない深夜などは産業用モード、日中の人と協働する場合は協働モードと切り替えることができます。 - 可搬重量が小さい
協働ロボットの可搬重量は4~20kgのラインナップが多いですが、産業用ロボットは小型から中型のもので3~50kg、大型のもので100~1500㎏などが可搬可能です。協働ロボットは安全性が高くさまざまな分野で活躍でき、パワーやスピードがある産業用ロボットとそれぞれの特徴を活かした使い分けが重要となります。
おすすめ協働ロボット
世界最大のロボット市場である中国国内でもトップメーカーのDOBOTが製造する「DOBOT CRシリーズ」は、他社にはない特許取得のセーフスキン機能があります。セーフスキンは、作業中のDOBOTアームが人や物と接触しそうになると、一定の距離を保って停止します。ぶつかる前に停止・避ける設定が可能なため、人との作業をより安全に行うことができます。世界的ロボットメーカーのため価格も日本のメーカーよりかなり安価となっています。
株式会社フレアオリジナルはDOBOT正規一次代理店としてロボットを販売するだけでなく、SIerとして豊富なロボット実績を活かしたオーダーメイドのロボット仕様を提案しております。