モーター制御とは

モーター制御とは、モーターを制御することで適切な速度・トルク・方向・位置を実現するための技術です。モーターは回転子と呼ばれる磁気回路の部品と、ステータと呼ばれる電気回路の部品から構成されています。モーター制御には、速度制御・トルク制御・位置制御などがあります。

  • モーター制御の概要
  • モーター制御の原理(種類)
  • モーター制御の用途
  • モーター制御のメリットとデメリット

1.モーター制御の概要

モーター制御はモーターを正確に制御することで希望する動作をさせることを目的とした技術です。モーター制御の対象となるモーターには、DCモーター・ACモーター・ステッピングモータなどの種類がありますが、ここではDCモーターとACモーターについて説明致します。

DCモーターには、ブラシ付きDCモーターとブラシレスDCモーターの2つの種類があります。ブラシ付きDCモーターは、ブラシを使用して直流電源をモーターに供給し、回転力(トルク)を発生させています。一方ブラシレスDCモーターは、電子回路を使用してモーターに電力を供給し、より高速で正確な制御が可能です。

ACモーターには、誘導電動機と永久磁石同期電動機の2つの種類があります。誘導電動機は、回転磁界を使用して回転力(トルク)を生み出し、AC電源を供給することで動作します。永久磁石同期電動機は、永久磁石を使用して回転力を生み出し、AC電源を供給することで動作します。ACモーター制御には、可変周波数制御、ベクトル制御、PWM制御などの方法があります。

またモーター制御は、様々な分野で使用されています。自動車や産業用機械、航空機、ロボットなど、様々な応用分野があります。モーター制御技術の進化により、高効率、高性能なモーターが実現され、省エネルギーや低炭素社会の実現に向けた技術開発が進んでいます。

2.モーター制御の原理(種類)

モーター制御とはモーターをその使用目的に合わせて動かす(回転)させる技術です。モーターを単純に回転させるだけでよいのであれば、モーター定格に有った電源を用意すればモーターは回転しますが、下記のような制御を行う為には、一般的に、PID制御、PWM制御、ベクトル制御と呼ばれる制御方式を用いて行われます。

  • モーターを目的の位置までの回転数を制御する
  • モーターの速度を制御する
  • 回転数の変動を制御する
  • モーターへの電力を制御する

2-1 PID制御

PID制御とは、フィードバック制御の一種であり、自動制御方式のことです。操作対象が一つで、目標値と操作量に比例関係がほぼ成り立つ場合に使用できる制御方法です。
P(比例制御)、I(積分制御)、D(微分制御)の3要素を組み合わせて制御し、PID制御を用いることでスムーズなモーター動作を実現しています。

2-2 PWM制御

PWM制御とは、高速にスイッチングを行う事によりモーターへの電力を制御する方式のことです。スイッチのONとOFFを繰り返すことで出力する電力を制御しています。
PWM制御は環境保全や省エネの観点から、エネルギー効率のより良い方法を模索する中で生まれてきた制御技術です。

2-3 ベクトル制御

ベクトル制御とは、トルクを発生する電流成分と回転子に磁束を発生させる電流成分とに分けて考え、それぞれの電流成分を独立に制御する制御方式のことです。ベクトル制御は、特にモーターの低速回転時の制御には効果的な制御方式です。

3.モーター制御の用途

電気モーターを制御することによって、色々な用途で使用されています。モーター制御の主な用途には次のようなものがあります。

3-1 工業用途

工業用途では、モーターは機械の動力源として利用されています。例えば、コンベアベルト・ポンプ・ファン・エアコンプレッサーなどの駆動に使われています。
このような機械は生産ライン上で重要な役割を果たすために、正確な速度制御やトルク制御が求められます。

3-2 自動車用途

自動車の電動パワーステアリング・ウインドウ・シートなどの制御にも、モーター制御が使用されています。またハイブリッド車や電気自動車においては、電気モーターによる駆動制御が不可欠な要素となります。

3-3 家庭用途

家庭用途においては、洗濯機・冷蔵庫・エアコン・掃除機などの家電製品において、モーター制御が使用されています。これらの製品では、低コストを維持しつつ、省エネルギー・静音性・操作の簡便性などを求められることから、シンプルな構造で効率の良い制御技術が要求されます。

3-4 ロボット用途

ロボットにおいてもモーター制御が必要不可欠です。ロボットの関節部分を動かすためのモーター制御や、走行モーターの制御、つまり移動ロボットや人型ロボットなど、様々なロボットにおいてモーター制御が使用されています。

3-5 航空宇宙用途

近年、技術の発展と民間企業の参入により、著しい進歩を遂げている航空宇宙産業においても、ロケットや衛星、宇宙船などの動力源として、高性能かつ信頼性の高いモーター制御が必要です。これらのモーター制御は、極端な温度変化、真空、高放射線などの厳しい環境下でも動作することが要求されます。

4.モーター制御のメリットとデメリット

4-1 メリットについて

① 効率的なエネルギー利用が可能:
モーター制御によりモーターの回転数やトルクを最適な状態に調整できる為、必要なエネルギーの量を最小限に抑えることが出来ます。これにより省エネルギー効果があります。

② 高速・高精度の制御が可能:
モーター制御により高速かつ高精度な動きを制御することができます。特にサーボモーターを使用することで、位置や速度の正確な制御が可能となります。

③モーターの保護が可能:
モーター制御はモーターの過負荷や過熱を防止(制御)することができます。制御システムはモーターの電流や温度などを監視する事で、過負荷や過熱が発生する前に制御を行って予防を行います。

④ 柔軟性の高い制御が可能:
モーター制御はモーターの回転数やトルクを任意の値に設定(制御)出来る為、制御の柔軟性が高くなります。またモーターの回転数やトルクを容易に切り替えることが出来るため、様々な用途に応じた制御が可能となります。

⑤ 騒音の低減が可能:
モーター制御はモーターの回転数やトルクを調整することが出来るため、モーターの騒音を低減させるためのチューニングが可能です。

4-2 デメリットについて

① 電気ノイズやEMI(Electromagnetic Interference)の問題:
モーター制御は、電気信号によってモーターを駆動する為、電気ノイズやEMIの問題が発生することがあります。これによって他の電子機器に影響を与えることがあります。

② 電力消費の問題:
モーター制御は、モーターに電力を供給するために、比較的大量の電力を消費することがあります。この為、省エネルギー化の観点から、制御回路や駆動回路の最適化が必要となります。

③ 複雑な回路設計の問題:
モーター制御を行う為に複雑な回路設計が必要となることがあります。特に高性能なモーターを制御するには、制御回路や駆動回路の設計力が要求されます。またマイコンを搭載しソフトウェアを用いる場合も信頼性の高いソフトウェア開発が要求されます。

④ 駆動回路の発熱問題:
モーター制御において駆動回路が発熱することがあります。設計によっては駆動回路の効率が悪く、モーターの負荷が高い場合が多いです。駆動回路の発熱によっては発熱の影響を受けて回路の部品の寿命が短くなる事もあります。

⑤ 駆動回路の保護の問題:
モーター制御において、駆動回路の保護は非常に重要です。駆動回路が短絡したり・過電流が流れたりすると、回路が破損する恐れがあります。この為に適切な保護回路を盛り込んだ設計をすることが重要となります。

【(著) 東阪電子機器株式会社】