AIとは

1.AIの概要

AI(人工知能)とは、平たく言えば「人間のような知能をもったコンピューター(人工の物)」です。
入力データを基に自ら学習することができるというのが大きな特徴です。

図1:AIの歴史

AIの研究はその過程でブームと冬の時代が交互に訪れ、現在第4次ブームとして「生成AI」が脚光を浴びています。第3次AIブームの内容については「機械学習とは」で解説しますので、ここでは最近話題となっているChatGPTに代表される「生成AI」について解説します。
生成AIとは、学習したデータの関係性や規則性を基に新しいデータや情報を自動的に出力してくれる技術です。生成できる情報には、文章、画像、動画、3Dモデル,音楽、プログラミングコード,人の動き、ロボットの動きなど、さまざまな種類があります。
次の表のように、生成AIと今までのAIと比較すると特徴的な違いがいくつかあります。

表1:生成AIと今までのAIの比較

2.生成AI(GPT)の原理

代表的生成AIのサービスであるChatGPTの核となる仕組みGPTについて説明します。
GPTとはGenerative Pretrained Transformerの略です。

  • Generative →生成的という意味を持ち、文章生成能力が高いことを指しています。
  • Pretrained →事前学習済み、膨大な学習データで既に学習済のモデル(データの法則を数式化したもの)だということを指しています。
  • Transformer →その学習が「Transformer」というモデルで行われたということです。
    (注)Transformerとは2017年にGoogleが発表した自然言語処理のAIモデルです。

生成AI(GPT)の原理を図解すると以下のようになります。

図2:生成AI(GPT)の原理

生成AIとのやり取りは「人間が理解できる自然言語」になります。入力された自然言語を先ずコンピューターが理解できる数値ベクトルに変換(エンコード)します。その数値ベクトルから単語どうしの関連性を把握(アテンション処理)し,確率の計算により値の一番大きいものを次に続く単語候補として数値ベクトルを次の処理に渡します。次の処理では渡された数値ベクトルを自然言語に変換(デコーダー)して順次出力を繰り返すことで連続した文章を出力することになります。

3.生成AI(GPT)の用途

生成AI(GPT)の用途としては以下の活用例が報告されています。

① 文章要約
入力文章について指定した文字数や箇条書きの数に要点を簡潔にまとめるこができ、長文を読解するのに有効です。

② 固有表現抽出
人名や地名などといった固有名詞や、日付、時間などに関する表現を、文章の中から抜き出すことができます。

③ 文章生成
人手に頼っていた文章の作成やまとめ作業を自動化することができます。

④ 分類、文章内の感情分析
人が入力した文章中の単語・言葉遣い・表現から、自然言語処理によって「ポジティブであるかネガティブであるか」「どのような感情を持っているか」を判定できます。

⑤ 質疑応答
「何々について教えて下さい。」と入力することで、学習データの中から確率的に最善の回答文が出力されます。

⑥ 自動翻訳
GPTは英語に特化した言語モデルですが、翻訳精度を問わなければ使用頻度の少ない言語を除いて多くの言語間で翻訳ができます。

⑦ プログラムのソースコード生成
具体的な要件を伝えることで、それに基づいたソースコードを生成することができます。ソーコードの雛形を素早く作成し、利用者があまり詳しくないプログラミング言語やライブラリ(特定処理のソースコードをまとめたもの)に対する手始めの学習を支援することができます。

⑧ 市場調査
自社で関連情報を収集し、GPTに入力」することで市場や競合状況を分析」することができ、効率的にビジネスの意思決定ができます。

⑨ SEO対策
最適なキーワードを抽出し自社サイトに効果的な文章として記述することで検索のランキングを向上させることができます。

⑩ アイデア生成
さまざまなアイデアを生成することができます。

4.生成AIの種類

生成AIについては、自然言語処理以外に様々なデータを扱う処理モデルが発表されており、代表的なものを挙げると以下の表のようになる。

表2:生成AIの種類

5.生成AI(GPT)の利点と欠点

生成AIは大きな可能性を秘めた技術ですが、全てが良いわけではありません。利点もあれば欠点もあります。

利点:

  • AI技術の開放
  • 今まではAIの知識や経験を持った特定のエンジニアだけに独占されていたAI技術が多くの人々に開放されます。高度な技術を必要とするデータサイエンティスト、イラストレータ、作家、デザイナー、設計者やプログラマーの仕事をある程度、生成AIに任せることできるようになり、誰でも生成AIを利用してデータや情報を創造する作業ができるようになります。

  • 新発想の増幅

    生成AIは少ない入力に対して多くのデータ、情報を出力することができます。かつ関連性が確率的に強い情報から優先的に出力しますが、その強弱は生成AIの利用者がデータ入力時に自由に調整することができます。結果としてさまざまな関連度合をもった出力結果を比較検討でき、新しい発想を幅広く想起することができます。

  • 作業のスピードUP

    生成AIを利用することで、データや情報の作成時間は大幅に短縮されます。また誰でも利用することができることにより作成数も簡単に増加させることになり全体としては級数的な作業のスピードUPに繋がります。

欠点:

  • 著作権の問題

    今後ガイドラインや法律は整備されていくと思われますが、現時点では入力データや出力としての生成コンテンツについて著作権の問題が発生する可能性があります。

  • 出力情報の品質低下

    生成AIは基本的には確率に高い情報を出力する仕組みですので、入力情報の内容によっては既存情報と全く同じ情報を出力したり、不正ないし不適切な情報を出力する恐れがあります。

  • 技術者や創作活動従事者の雇用・収入減

    AI技術の開放により、今まで専門家のみが就労していた労働領域に多くの生成AI利用者が参入することが想定され、既存の就労者の雇用・収入が減少する恐れがあります。

6.生成AI(GPT)のロボットへの利用

生成AIのロボットへの利用については、一部の研究機関での実験が始まったばかりです。公開されている最先端の研究論文(Robotics at Google, Everyday Robots, Google Research, Brain Teamが提案した 「RT-1: Robotics Transformer for Real-World Control at Scale」 をを要約して以下に紹介します。

図3:ロボット版GPT

「Robotics Transformer 1」を略してRT-1と名付けられています。
実験プロジェクトでは17カ月間、ロボットの動き(デモ)の画像データを収集しました。デモの数は13万回、私用ロボットはEDR(Every Day Robots社)を13台、タスク(作業)の数は744の動画データを利用してモデル作成をした結果、英語(テキスト)データを作業指示として入力した場合、学習していない新規のタスク(作業)も含め700の指示入力に対して97%の精度で、正確にタスク(作業)を行う動きをしたということです。
この実験プロジェクトから「ロボットが人の自然言語指示で動作する未来」が近い未来に実現することが大いに期待できます。

【(著) Alto Software株式会社】