長距離海底直流送電の実現に向け、ケーブル防護工法・敷設船などの技術開発に着手
―系統増強のコスト低減・工期短縮を図り洋上風力などの再エネ大量導入に貢献―
NEDOは「多用途多端子直流送電システムの基盤技術開発」(以下、本事業)において、海底直流ケーブルの敷設に関する技術開発テーマ1件を採択しました。
北海道などの風力発電の適地から電力の大需要地に送電するには、電力系統を増強する必要があり、長距離海底直流送電が有望とされています。本事業ではケーブルの防護工法や、日本特有の海象・気象に対応した敷設船などの基盤技術を開発し、系統増強にかかるコスト低減や工期短縮を目指します。
NEDOは本事業を通じて、洋上風力などの再生可能エネルギー(以下、再エネ)の大量導入を可能とする長距離海底直流送電の早期構築を実現させ、「第6次エネルギー基本計画」で掲げられた2030年の再エネ比率(36~38%程度)の達成に貢献します。
1.概要
日本の再エネ比率向上のためには、風況が良く立地制約が比較的少ない洋上や離島周辺を活用した風力発電の導入を拡大することが重要です。しかし、北海道や東北、九州などの風力発電の適地は電力の大需要地から離れており、今後さらに大量導入していくためには、既存の電力系統の容量では送電が難しくなることが想定されています。この課題を解決するには電力系統を増強する必要があります。なかでも、“交流”に比べて送電損失が少なく、送電線コスト面でも長距離送電に有利な“直流”を用いた長距離海底直流送電の構築が有望な方策とされており、早期の整備が期待されています。しかしながら、これまでの調査※1などにより、北海道などから大需要地までの海洋ルートには、ケーブルを埋設できない岩盤域での敷設が多くなると推定されており、防護管の取り付けによる工期の長期化やコスト増加が予想されます。このため、ケーブル防護工法のコスト低減や、日本特有の海象・気象に対応できるケーブル敷設船、その艤装(ぎそう)※2設備などの技術開発が不可欠です。
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)は本事業※3で、複数の洋上風力を効率的に電力系統と接続でき、異なる供給区域を結ぶ地域間連系線としても活用可能な多端子直流送電システムの技術開発に取り組んできており、今般、海底直流ケーブルの敷設に関する技術開発テーマ1件を採択しました。
NEDOは本事業を通じて、洋上風力など再エネの大量導入を可能とする長距離海底直流送電の早期構築を実現させ、「第6次エネルギー基本計画」で掲げられた2030年の再エネ比率(36~38%程度)の達成に貢献します。
2.採択テーマ
このたび採択したテーマでは、ケーブル敷設船上で防護管をケーブルに高速で取り付ける工法などを開発し、既存工法に比べて20%のコスト低減と、工期短縮を目指します。また、大容量の長距離海底直流送電ケーブル敷設に必要となる自航式ケーブル敷設船などの開発を行います。
- 【事業名】多用途多端子直流送電システムの基盤技術開発
- 【予算】約10億円(2023年度)
- 【期間】2023年度~2025年度(予定)