遠隔監視のみのレベル4の自動運転車両に対する国内初の認可を取得

2023.04.05更新

ポイント
・レベル4の自動運行装置として国内で初めての認可
・不具合などによる停止時に備えて配置していた運転者が不要に
・ドライバー不足に対応し交通弱者と地域の活性化につながる新しい交通手段の実現に貢献

概要
国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下「産総研」という)情報・人間工学領域 デジタルアーキテクチャ研究センター加藤晋首席研究員は、福井県吉田郡永平寺町で実証実験を実施している遠隔型自動運転システムによる無人自動運転移動サービスの車両を高度化し、遠隔監視のみのレベル4の自動運行装置を備えた車両として、国内で初めて、2023年3月30日に認可※を受けました。

産総研は、遠隔監視・操作型の自動運行装置を備えたレベル3の車両について、2021年3月5日に国内初の認可を受け、当該車両を用いて、永平寺町が2021年3月25日より本格運行を開始していました(2021年3月23日お知らせ)。

産総研は、経済産業省および国土交通省の令和4年度「無人自動運転等のCASE対応に向けた実証・支援事業(自動運転レベル4等先進モビリティサービス研究開発・社会実証プロジェクト(テーマ1:2022 年度に限定エリア・車両での遠隔監視のみ(レベル4)で自動運転サービスの実現に向けた取組))」を幹事機関として受託し、永平寺町におけるレベル4の無人自動運転移動サービスの社会実装に向けて、ヤマハ発動機株式会社、三菱電機株式会社、株式会社ソリトンシステムズとともに、研究開発と実証を進めてきました。

同事業では、公共的な利用を前提に、地域の活性化などにつながる新たな交通システムとして、ドライバー不足解消やコスト削減などに資する自動走行技術を取り入れた遠隔型自動運転システムなどの研究開発を行い、永平寺町役場、まちづくり株式会社ZENコネクトの協力を得て実証を重ねてきました。走路は、えちぜん鉄道の廃線跡地の町道である永平寺参ろーどの南側約2 ㎞とし、高齢住民、通勤・通学者や観光客の移動手段としてのサービスを目指しています。レベル3では、走行環境条件を満たさなくなる場合や故障発生時などの緊急対応を想定し、運転を引き継げる運転者の配置が必要でしたが、レベル4では、自動運行装置が自動運転車両の周囲の状況を判断し、出発・停止などの運転作業や緊急時の自動停止等を実施するため、運転者の配置が不要となり、遠隔にいる監視者は主に自動運転車両が不具合などで自動停止した後の対応をすることとなります。また、遠隔監視者1名が3台の自動運転車両を運行することが可能です。これにより運転の負担は大幅に軽減されます。

今後、4月に改正される道路交通法による特定自動運行に係る許可の取得により、車両内無人でのレベル4の自動運転移動サービスが可能となります。移動サービスの開始に向けては、サービス面での実証実験などを行う予定です。

※自動運行装置は特定条件の範囲内で運転者に代わって運転操作を実施。

自動運行装置(名称:ZEN drive Pilot Level 4)
道路に敷設した電磁誘導線上を走行し、周辺の交通状況を監視するとともに、運転者に代わって運転操作を行い、最大速度12 km/hで自動走行する装置。当該装置は、国土交通大臣が付与した特定条件(走行環境条件)の範囲内で作動が可能となり、作動後、走行環境条件を満たさなくなる場合や故障発生時などにおいても、車両が判断し運行を停止します。今回の認可における走行環境条件は以下の通りであり、レベル3と同様です。

走行環境条件
1.道路状況および地理的状況
 (道路区間)
 ・福井県吉田郡永平寺参ろーど:京福電気鉄道永平寺線の廃線跡地
 ・町道永平寺参ろーどの南側一部区間:永平寺町荒谷~志比(門前)間の約2 km
 (道路環境)
 ・電磁誘導線とRFID による走行経路
2.環境条件
 (気象状況)
 ・周辺の歩行者などを検知できない強い雨や降雪による悪天候、濃霧、夜間などでないこと
 (交通状況)
 ・緊急自動車が走路に存在しないこと
3.走行状況
 (自車の速度)
 ・自車の自動運行装置による運行速度は、12 km/h以下であること
 (自車の走行状況)
 ・自車が電磁誘導線上にあり、車両が検知可能な磁気が存在すること
 ・路面が凍結するなど不安定な状態でないこと

AIST(国立研究開発法人産業技術総合研究所)

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