結晶粒超微細化により、酸素に起因したチタンの低温脆性を克服
~悪者とされてきた不純物酸素の有効利用に期待~
更新日:2023.02.03
概要
崇 巌(CHONG・Yan)・京都大学 大学院工学研究科 材料工学専攻 特定助教、辻 伸泰・工学研究科 材料工学専攻 教授は、都留 智仁・日本原子力研究開発機構(理事長 小口 正範) 研究主幹と共同研究を行い、結晶粒超微細化によって酸素に起因したチタンの低温脆性を克服することに成功しました。チタンおよびチタン合金の結晶中に侵入型固溶原子として存在する酸素は、力学特性上の諸刃の剣と考えられてきました。酸素は強度を大きく向上する一方で延性(均一な伸び)を著しく低下させます。例えば、酸素格子間物質を0.30重量パーセント(~1.0原子パーセント)の濃度で添加するだけで、チタンは極低温の77ケルビンで完全にもろくなってしまいます。その結果、チタンの工業生産においては酸素除去のためのコストが増加します。本研究では、チタンにおけるこのジレンマを克服する基本戦略として、結晶粒超微細化の有効性を明らかにしました。0.3重量パーセントの酸素を含む超微細粒多結晶純チタン(平均粒径2マイクロメートル)は、77ケルビンで超高強度(~1250メガパスカル)と大きな均一伸び(~14パーセント)を示すことを発見しました。先端的なナノスケール材料解析手法と理論計算により、高強度化と脆性抑制の理由が明らかとなりました。本成果は、チタンおよびチタン合金においてこれまで悪者とされてきた酸素の役割を転換し、酸素の有効利用と、チタン製造コストの低減の可能性を示すものです。
本研究成果は、2023年2月1日(現地時間)に国際学術誌「Nature Communications」にオンライン掲載されます。