素子間の結合による超伝導電流の非局所制御に成功~将来的な超伝導量子計算への応用に期待~

更新日:2022.9.16

理化学研究所(理研) 創発物性科学研究センター 量子機能システム研究グループの松尾 貞茂 基礎科学特別研究員、樽茶 清悟 グループディレクターらの国際共同研究グループは、並列に配置された2本の半導体ナノ細線上に2つの「ジョセフソン接合」を形成し、ジョセフソン接合間にコヒーレント結合が存在することを示す「非局所ジョセフソン効果」の観測に初めて成功しました。

本研究成果は、量子情報処理技術の基盤となるジョセフソン接合に関する新しい制御手法を提案するものであり、新機能超伝導素子の開発、超伝導量子ビット間の結合の形成への応用が期待できます。

ジョセフソン接合は2つの超伝導体が絶縁体や常伝導体を介して弱くつながっている素子のことで、近年発展の著しい超伝導量子コンピューター開発において主要な役割を担うと期待されています。ジョセフソン接合の新しい制御手法として、近距離に配置された2つのジョセフソン接合間にできるコヒーレント結合の利用が提案されていましたが、まだ実証されていませんでした。

今回、国際共同研究グループは、2本の細線上に片側の超伝導電極をそれぞれ共有した2つのジョセフソン接合を作製し、その輸送測定を行いました。その結果、一方のジョセフソン接合を流れる超伝導電流が他方の接合に対して依存性を持つ非局所ジョセフソン効果の観測に成功しました。この効果は、2つのジョセフソン接合がコヒーレントに結合していることを示しています。

本研究は、オンライン科学誌「Communications Physics」(2022年9月13日付:日本時間9月13日)に掲載されます。

本研究は、日本学術振興会(JSPS) 科学研究費助成事業基盤研究(S)「非可換エニオンの電気的光学的制御(研究代表者:樽茶 清悟)」、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 さきがけ「並列二重ナノ細線と超伝導体の接合を用いた無磁場でのマヨラナ粒子の実現(研究代表者:松尾 貞茂、JPMJPR18L8)」、新世代研究所ATI研究助成「並列ジョセフソン接合間に流れる非局所超伝導電流の制御」、令和3年度 公益信託 小澤・吉川記念エレクトロニクス研究助成基金「超良質超伝導半導体量子井戸接合の実現とマヨラナ粒子の実現」による支援を受けて行われました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Generation of stable microtubule superstructures by binding of peptide-fused tetrameric proteins to inside and outside”
DOI:10.1038/s42005-022-00994-0

<お問い合わせ先>

<研究に関すること>

  • 松尾 貞茂(マツオ サダシゲ)
    理化学研究所 創発物性科学研究センター 量子機能システム研究グループ 基礎科学特別研究員
  • 樽茶 清悟(タルチャ セイゴ)
    理化学研究所 創発物性科学研究センター 量子機能システム研究グループ グループディレクター

<JST事業に関すること>

  • 嶋林 ゆう子(シマバヤシ ユウコ)
    科学技術振興機構 戦略研究推進部 グリーンイノベーショングループ
    〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K’s五番町
    Tel:03-3512-3526 Fax:03-3222-2066
    E-mail:presto[*]jst.go.jp

<報道担当>

  • 理化学研究所 広報室 報道担当
    Tel:050-3495-0247
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  • 科学技術振興機構 広報課
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