IoT機器駆動に向けた微細化熱電素子を開発
-半導体微細加工でIoT機器駆動に必要な0.5 Vの壁を克服-
国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)、国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)、国立大学法人筑波大学の研究グループは、熱電変換物質の薄膜試料に半導体微細加工を施すことにより、多数のπ接合(図(a))からなる熱電素子の作製に成功し、IoT(Internet of Things)機器の駆動に必要な目安となる0.5 V以上の出力電圧を実現しました。
IoT機器や電子素子の駆動電源として熱電変換モジュールを用いるためには、これらの一体化が必要となります。これまでバルク材料を用いた熱電変換モジュールが主流でしたが、モジュールの微小化や周辺電子素子との集積化に課題を抱えていました。熱電モジュール・素子は、一般的に小型化・微小化に伴いその出力電圧は低下し、その向上には多数のπ接合の形成が必要です。本研究では、多数の微小なπ接合を高い精度で作ることができる半導体微細加工技術により、熱電素子を試作しました。
本研究チームは、微小化に伴う出力電圧の低下を抑えるために、高い熱起電力と低い電気抵抗を示すMg2Sn0.8Ge0.2をp型層として用い、n型層形成には室温薄膜形成が必要であることからビスマス(Bi)を用いて、半導体微細加工技術により図(b)に示した高密度な平面π型熱電素子を作製しました。この熱電素子は、多数の微小なπ接合(36接合, 図(b))を作りつけることにより、IoT機器の駆動の目安となる0.5 V以上の出力電圧を実現しました。
本研究成果により熱電素子の微細化・微小化が可能になり、他の電子素子と融合することで、IoT機器等の新しい電子機器・素子の開発が期待されます。本研究は、科学技術振興機構(JST)未来社会創造事業 研究課題「磁性を活用した革新的熱電材料・デバイスの開発(研究開発代表者:森 孝雄)」(No. JPMJMI19A1)等の一環として行われました。