藻類の太陽光エネルギーを吸収する仕組みを解明
~高効率な光エネルギー伝達デバイスへの応用に期待~
理化学研究所(理研) 放射光科学研究センター 利用技術開拓研究部門 生体機構研究グループの川上 恵典 研究員、米倉 功治 グループディレクター(東北大学 多元物質科学研究所 教授)、東北大学 多元物質科学研究所 生物分子機能計測研究分野の浜口 祐 准教授、大阪公立大学 人工光合成研究センターの神谷 信夫 特別招へい教授(大阪市立大学 名誉教授)、大阪公立大学 大学院理学研究科 生物学専攻の宮田 真人 教授、熊本大学 産業ナノマテリアル研究所の小澄 大輔 准教授、豊橋技術科学大学応用化学・生命工学系の広瀬 侑 准教授の共同研究グループは、太陽光エネルギーを高効率に吸収する藻類の光捕集たんぱく質複合体「フィコビリソーム」の中心およびアンテナ部位の立体構造を明らかにすることに成功しました。
本研究成果は、光合成の初期過程である光エネルギーを吸収する仕組みを解明したものです。藻類の光捕集の仕組みを理解し、この知見を人工光合成研究に取り入れることで、高効率光エネルギー伝達デバイスの開発に貢献することができると期待されます。 今回、共同研究グループは、好熱性シアノバクテリアThermosynechococcus vulcanus(T.vulcanus)から単離したフィコビリソームの中心部位であるコアとアンテナ部位である棒状のフィコシアニンロッドのそれぞれについて、クライオ電子顕微鏡を用いた単粒子解析を行いました。複雑で巨大な複合体の観察には、クライオ電子顕微鏡測定に適した試料調整と国産クライオ電子顕微鏡の運用技術開発が必要でした。本研究で解析されたフィコビリソームは発色団としてフィコシアノビリンのみを持ち、たんぱく質環境の違いによって各発色団の吸収波長を変化させ、単一の発色団を用いた一方向性の超高速光エネルギー伝達システムを構築しています。フィコビリソームの立体構造を解析することで各フィコシアノビリンの周辺環境の詳細が明らかとなり、そのエネルギー伝達システムが明らかにされました。本研究は、科学雑誌「Nature Communications」オンライン版(2022年6月17日付:日本時間6月17日)に掲載されます