次世代コンピューティング基盤戦略を策定
-日本が集中的に取り組むべきハードウエア開発を示す-
ポイント
- 日本が次世代コンピューティングハードウエア開発で取り組むべき戦略を策定・公開
- 日本の強みを生かすには、実世界エッジコンピューティングと超分散コンピューティングの戦略が重要
- 戦略会議のもとに「グリーンサステナブル半導体製造技術検討会」を設置、製造技術の体系的構築に向けた検討を開始
概要
国立研究開発法人 産業技術総合研究所【理事長 石村 和彦】(以下「産総研」という)エレクトロニクス・製造領域【領域長 安田 哲二】およびTIA推進センター【センター長 金丸 正剛】は、2021年3月より次世代コンピューティング基盤開発拠点(以下「拠点」という)を設置し、活動を開始、その中で益一哉 東京工業大学学長と金山敏彦 産総研特別顧問を共同座長として、大学、企業の有識者、国立研究開発法人 新エネルギー産業技術総合開発機構 技術戦略研究センターおよび産総研のメンバーからなる戦略会議を設置、検討を進めてきた。(関連2021年4月16日お知らせ次世代コンピューティング基盤開発拠点活動をスタート- 戦略策定、オープンイノベーションプラットフォーム構築と研究開発推進に向けて -)
このたび「次世代コンピューティング基盤戦略 第一版」(以下「戦略」という)を策定し、拠点ウェブページに公開した。戦略では、次世代コンピューティングの中心が「集中から分散へ、クラウドから実世界へ」向かうとして(図1)、戦略目標とそれらを支える拠点および人材育成戦略を定めた。また、戦略会議のもとに「グリーンサステナブル半導体製造技術検討会(以下、検討会)」を設置、民間企業7社および東京工業大学、産総研をメンバーとして活動を開始した。検討会では活動に興味を持つ企業、大学等のメンバーをさらに募集してい
戦略の社会的背景
Society5.0 を支えるコンピューティング技術が大きな変革期を迎えている。半世紀以上にわたって続いてきたシリコン電子回路の微細化が限界を迎えつつある中、従来のCPU中心のコンピューティングシステムでは、取り扱うデータの爆発的な増加への対応が困難になりつつある。一方では、モバイル技術や通信技術の進展に伴い、クラウドに加えて情報端末やセンシングデバイス近傍でのコンピューティング(エッジコンピューティング)の重要性が増している。今後は、エッジコンピューティング、およびエッジとクラウドを有機的に結び最適なコンピューティング能力を発揮するための、ネットワークとコンピューティングが一体化したシステム(超分散コンピューティング)が重要となってくる。この新たな潮流の中で日本が重要な地位を占めるための研究開発およびビジネス化の戦略、その戦略を実現するための研究開発体制の構築、および人材育成を実現することが極めて重要である。
戦略策定の経緯
次世代コンピューティング技術、その中でも特に基盤(ハード)技術に関わる産業・学術分野において日本が重要な位置を占め、また占め続けるために、①研究開発およびビジネス化の戦略策定、②戦略に基づいた産総研における研究開発推進、③企業・大学等が効率的に研究開発や人材育成を進めるために活用される試作・評価機能の実現、の3点を目的とした拠点を2021年3月に産総研に設置した。この拠点における活動の一環として、益一哉 東京工業大学学長と金山敏彦 産総研特別顧問を共同座長として、大学、企業の有識者、国立研究開発法人新エネルギー産業技術総合開発機構技術戦略研究センター(NEDO-TSC)および産総研のメンバーからなる戦略会議を設置、検討を進めてきた。このたび「次世代コンピューティング基盤戦略」をまとめたので、政府、企業、大学等で広く活用されることを期待してその内容を公開することとした。
戦略概要
次世代コンピューティングの中心は「集中から分散へ、クラウドから実世界へ」向かうことが想定される。その中で、少子高齢化、多発する自然災害、エネルギー・資源問題等の社会課題、また、日本の技術や産業の現状より、2030年以降の産業や技術を見据え、日本が取り組むべき技術開発や産業強化の下記三つの戦略目標とそれらを支える設計・試作・評価拠点および人材育成戦略を定めた。