計算科学を活用したファインセラミックス製造の革新的なプロセス開発基盤の構築に着手
~日本のファインセラミックス産業の競争力強化を目指す~
NEDOはポスト5G・6G通信分野などで、さまざまな電子部品やその製造設備などに使用されるファインセラミックス部材の産業競争力確保のため、革新的なプロセス開発基盤の構築に取り組む「次世代ファインセラミックス製造プロセスの基盤構築・応用開発」事業に着手します。 本事業では、これまで行われてきた「経験と勘」などに基づくファインセラミックス製造のプロセス開発を変革し、計算科学との融合・連携によってプロセス開発期間を大幅に短縮するプロセス開発基盤を構築します。また構築したプロセス開発基盤を活用する企業が、幅広く製品開発に適用できるよう支援することにより実用化を加速し、2035年におけるファインセラミックス部材の出荷額約1兆円の増加(2019年比)につなげ、日本のファインセラミックス産業の競争力強化を目指します。
1.概要
Society 5.0の実現に向けて、ポスト5G・6G通信分野などでハードウエアの中核となるデジタル機器の小型化や高性能化、高信頼化の要望が高まっています。デジタル機器の安定作動を支えるファインセラミックス電子部品や、その製造に関わるエンジニアリングセラミックス部品など、幅広い分野で使われている日本のファインセラミックス部品は世界市場の約4割を占めています。今後、市場が拡大するエネルギー・IoT分野や医療・ヘルスケア分野でのデジタル化においても、海外の技術的な追い上げを許さない高い産業競争力と世界シェアを確保していく必要があります。
ファインセラミックスは、製造プロセスのうち原料粉末の成形・焼成過程で、微構造などの形体や混合状態などの質が変化しますが、それらの情報は製品にほとんど残りません。このため、製品の構造を分析し製造方法を調査する「リバースエンジニアリング」が困難であり、ノウハウをブラックボックス化できることが強みになっています。
一方で、最適なプロセス条件の設計の多くは「経験と勘」や「製造プロセス間の人的なすり合わせ」に頼ってきたため、プロセス開発期間の長期化が課題でした。今後、ファインセラミックス産業において、他国の技術的な追い上げを許さない高い産業競争力と世界シェアを確保していくためには、従来の方法に代わり、プロセス開発期間を大幅に短縮できる革新的なプロセス技術が不可欠です。こうした背景から、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)はファインセラミックス製造の革新的なプロセス開発基盤の構築を目指し、「次世代ファインセラミックス製造プロセスの基盤構築・応用開発」事業に着手します。
2.事業内容
本事業では、一企業では困難な、ファインセラミックスの一連の工程を対象とした製造プロセス技術と計算科学の融合・連携により、ファインセラミックスのプロセス・インフォマティクス技術を確立するとともに、これらの技術を活用する企業が、幅広く製品開発に適用できるよう支援します。これにより実用化を加速し、2035年にはファインセラミックスの出荷額を2019年比で約1兆円の増加につなげ、ファインセラミックス産業の競争力強化を目指します。また従来よりも大幅に低い焼成温度条件下における焼結技術などの革新的なプロセス技術の開発により、2035年に年間約247万トンの二酸化炭素(CO2)削減が期待できます。