磁場による超伝導電流増幅の機構を解明
~超伝導デバイスの高性能化に貢献~

更新日:2022.5.27

理化学研究所(理研) 創発物性科学研究センター 量子機能システム研究グループの佐藤 洋介 リサーチアソシエイト、松尾 貞茂 基礎科学特別研究員、樽茶 清悟 グループディレクターらの国際共同研究グループは、半導体ナノ細線上に作製したジョセフソン接合において、磁場を加えることで超伝導電流が増幅される効果を詳細に研究し、これまで想定されていたトポロジカル相が関与していないことを明らかにしました。

本研究成果は、従来のトポロジカル相が関与するという議論に終止符を打つと同時に、超伝導接合を用いた新奇なデバイスの設計に貢献するものです。本研究の磁束による超伝導接合の冷却効果を応用した設計により、マヨラナ粒子の探索の効率化や、超伝導量子ビットの性能向上も期待できます。

これまでの研究で、磁場中で超伝導電流が増幅するという現象については、トポロジカル量子計算への応用が期待される、マヨラナ粒子やトポロジカル相が関与しているという議論がなされてきました。しかし、その根拠となる実験には不可解な点も多く残されていました。 今回、国際共同研究グループは、半導体ナノ細線インジウムヒ素(InAs)に2つの超伝導体アルミニウム薄膜を接合したジョセフソン接合デバイスを作製しました。接合間を流れる超伝導電流を測定した結果、弱い面直磁場の下で超伝導電流が増幅されることを確認しました。さらに、磁場の向きや接合の電子密度を変えて実験を行い、この増幅が起こる機構を解明しました。

本研究は、科学雑誌「Physical Review Letters」(2022年5月20日号)のEditors' Suggestionに選ばれ、オンライン版(2022年5月19日付、現地時間)に掲載されました。