ビッグデータやAIを活用したデータ・プラットフォームの新機能を開発
NEDO事業において、(株)竹中工務店はスマートビル実現のため新機能を有したデータ・プラットフォーム「ビルコミュニケーションシステム®(ビルコミ®)」を開発しました。ビッグデータや人工知能(AI)を活用した実証実験に取り組むことでビルコミ®の社会実装を加速し、省エネと快適性の両立を目指した高度な建物環境の制御や運用管理を可能にするスマートビルの実現を目指します。
概要
デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展を背景に、オフィスビルや商業施設ではクラウドやIoT (Internet of Things)などを活用し、高度な建物環境の制御や運用管理などを可能にするスマートビルの実現が求められています。
このような背景の中、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の研究開発プロジェクトにおいて、株式会社竹中工務店はスマートビルの実現を視野に、同社が独自開発した「ビルコミュニケーションシステム®(ビルコミ®、以下、ビルコミという)を基にしたデータ・プラットフォームの研究開発を推進してきました。そしてこのたび、ビルコミの従来機能であるリアルタイムのモニタリングや遠隔制御機能に加え、ビッグデータへの対応やBIM(Building Information Modeling)で作成された属性データとの連携、インターネットの標準仕様に準拠したアプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)提供のための機能を開発・拡充しました。
(株)竹中工務店はビッグデータやAIを活用した実証実験に取り組むことで機能拡充したビルコミの社会実装を加速し、省エネと快適性の両立を目指した高度な建物環境の制御や運用管理を可能にするスマートビルの実現を目指します。
開発・拡充した新機能の概要
ビルコミを導入したスマートビルは、図1に示す三つの要素で構成されます。サービスとしてのプラットフォーム(PaaS)を用いることでランニング費用を抑えながら、高い可用性を実現しています。またゲートウェイやAPI接続のためのサンプル・ソースコードは開発パートナーに提供しており、ビルコミを利用した開発を容易に始めることができます。
これによりスマートビルで求められるあらゆるニーズに対応できるとともに、ビルコミを用いたサービス開発に要するコストを低減することができます。また、ウェブやゲーム、ロボットの開発会社など多くの開発パートナーの参画が容易になるため、スマートビルのサービス開発の可能性を広げることができます。
【1】ゲートウェイ
建物内で発生した設備システムやIoTのデータをビルコミのデータ受信部に送信したり、ビルコミからの指示を受けて建物内のサブシステムに伝達したりします。
【2】データ・プラットフォーム
データにアクセスするためのAPIを提供しており、WoTをはじめとするオープンな技術仕様に基づいて設計と実装を行います。APIを利用するにあたり、細かな認証を設定することも可能です。
【3】アプリケーション(サービス)
スマートビルの機能を提供するソフトウェアです。ゲームエンジンを用いたデジタルツインやAIによる設備制御などがあり、開発パートナーにより提供されます。
実証実験の内容
(株)竹中工務店はNEDO事業で機能拡充したビルコミを、同社などが2020年12月に開設した共同実験施設「コモングラウンド・リビングラボ(CGLL)」にプラットフォームの一部として導入しました。CGLLには照明や空調システムなどの設備だけでなく、施設内のあらゆる状況や機能をモニタリングできるカメラやLiDAR※8といったセンサーを設置しており、これらを活用することでCGLLの設備やIoTなどのデータ取得・保存のほか、ゲームエンジンを用いて構築したデジタルツイン・アプリケーションを介した設備の遠隔設備操作(図2)やロボット連携などの実証を行います。
今後の予定
(株)竹中工務店は中長期的にビルコミの社会実装を進めることで、省エネと快適性を両立させる高度な建物環境制御の実現や、ZEBや複数棟制御をはじめとする高度な電力デマンド制御などの実現、さらにAIやロボットなどとの連携による建物管理の高度化・省人化に取り組んでいきます。このため、まず多くの企業や研究機関とこれらのサービスを共同開発し、ニーズの変化に応じたメニューの拡大を進めます。併せて不動産デベロッパーなどに提供する体制を整備し、2021年度中にサービス提供を開始する予定です。また本システムを都市OSなどと連携させることでスマートシティ向けデータ・プラットフォームへと用途を拡大させ、国際標準化を目指します。