複数のAIアクセラレータを搭載した評価チップの設計を完了、試作を開始

2021.5.11 更新

NEDOはAIチップ開発加速のためのイノベーション推進事業に取り組んでおり、産業技術総合研究所、東京大学と共同で、ネットワークの端末などに使われるエッジ向けAIチップの設計を容易にするために、AIチップに使用されるAIアクセラレータ開発のための評価プラットフォームの構築を進めています。このたび、本評価プラットフォームの実証のため、仕様が異なる6種類のAIアクセラレータを同一チップに搭載した評価チップの設計を完了し、外部の製造会社で試作を開始しました。

本評価プラットフォームを使うことにより、AIチップを開発する中小・ベンチャー企業などは、東京大学浅野キャンパス(東京都文京区)内に整備を進めている「AIチップ設計拠点」で、各企業が設計したAIアクセラレータ搭載の独自なAIチップを擬似的に作成できるため、短期間(従来比45%以下)に低コストでAIチップの設計と評価が可能になります。

概要

目覚ましく進展するIoT社会において、実世界のビッグデータから人々の生活に新たな価値を創造する鍵として人工知能(AI)技術が注目されています。一方、AI技術の根幹をなす半導体集積回路では、微細化が物理的な限界に近づいていること、エネルギー消費が増大し続けることが極めて大きな課題となっています。この課題を解決するためには、省エネルギーで効率的にAIを動作させる半導体集積回路・デバイス(AIチップ)の開発が必要不可欠であり、世界的にもAIチップの開発競争が激化しています。

日本国内においては、多くの中小・ベンチャー企業などが台頭し、AIチップの開発に名乗りを上げています。しかし、AIチップの開発には、半導体を設計するための高度な技術が求められると共に、高額な回路設計ツールや検証装置などをそろえる必要があり、中小・ベンチャー企業などが自らのアイデアをチップ化に結びつける大きな壁になっています。

このような背景のもと、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、AIチップ開発加速のためのイノベーション推進事業において、国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)、国立大学法人東京大学(東京大学)と共同で、東京大学浅野キャンパス(東京都文京区)内の武田先端知ビルにAIチップ設計拠点(https://ai-chip-design-center.org/)として、半導体設計に必要な共通基盤技術の開発や回路設計ツール用のEDAツールや標準IPコアなどからなる設計環境の整備を進めています。

この一環として、本AIチップ設計拠点ではアルゴリズムを実行するエンジンとして中小・ベンチャー企業などが開発する独自のAIアクセラレータ向け評価プラットフォームの構築を進めています。開発されるAIアクセラレータを実環境で評価するには、そのAIアクセラレータと標準システム回路を有するSoC、いわゆるAIチップを開発し、それを用いてシステムレベルでの評価を行う必要があります。本評価プラットフォームは、共通基盤技術として標準システム回路、検証回路、テスト回路、および評価ボードなどを開発し、中小・ベンチャー企業などにこれら共通技術をAIアクセラレータ向け評価プラットフォームとして提供することで、各企業独自のAIアクセラレータ搭載チップの開発とそれを用いたシステムレベルでの評価を短期間に実現することを目指します。

このたび、本評価プラットフォームの実証として中小・ベンチャー企業の協力を得て、6種類の独自AIアクセラレータを搭載したCMOS※828nmプロセスを用いる評価チップ(AI-One)の設計を完了し、外部の製造会社にて試作を開始しました。

今後の予定

本事業では今回設計した評価チップ(AI-One)を用いて、設計段階で見積もった各アクセラレータの消費電力や動作周波数などをもとに、2021年9月頃に実チップを搭載したボードで比較評価を行い、アクセラレータの実環境での評価を進めます。そのフィードバックを活用してさらに使いやすいエッジ向けAIチップの評価プラットフォームとして確立していきます。

また本拠点では、AIチップ設計に関する共通基盤技術などの開発を進め、さらに使いやすいAIチップ設計環境を構築していきます。これらの取り組みにより、AIチップ設計拠点の確立と、日本の中小・ベンチャー企業などのAIチップ開発を後押しします。


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